富士見市の広報誌の取材(2020年9月)

【今月のFujimist】--------------

誰にも相談せずにあきらめようとしていた過去が、自身にもある。

母子家庭で育ち、常に貧困と隣り合わせだった青少年時代。

比較的学費の安価な国立大学を目指し、必死で勉強した。

しかし、合格後届いた学費納入通知に記載されていた額はとても支払える額ではなかった。


「いつも働きづめの母には当然言えず、心が折れそうでした」と語る川上さん。

そんな声無き声を引き出したのは、地域の方とのふとした会話。

そこからさまざまな相談先や制度につながり、進学が叶った。

「いい意味で“人生どうにかなるんだ”と思いました」と当時を振り返った。


大学卒業後、市内で学習塾を運営するエイメイ学院に入社。代表取締役社長となった現在まで、数千人の子や親と向き合ってきた。

授業料の支払いが困難な家庭も多く、改めて貧困を意識した。「貧困なんかで夢をあきらめてほしくない」。

そんな想いで塾内の奨学金制度などを創設。より社会貢献的な活動を行うため、NPO法人教育援護会も設立した。

「私は確かに貧しかったが、人や地域には恵まれていました。人や地域をつくるのは教育や子育て。

私が受けた恩を今困っている人へとつなぐ『恩送り』の気持ちで活動しています」と話す川上さん。

今は子ども未来応援センターの「若者のための学び直し相談」の相談員でもある。


「貧困だけでなく、いじめなどに悩む若者の相談も受けています。大切なのは自らの手で人生を切り拓(ひら)く力。過去の私と同様、問題のあるケースは自ら視野を狭(せば)めている傾向があります。

相談者にさまざまな選択肢を提示し、伴走することで“人生どうにかなるんだ、どうにかするんだ”という気持ちを育みたいです」。

 

経験に裏打ちされた川上さんの言葉に、無限に広がる人生の可能性を感じさせられた。


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